10月13日は豆の日。お豆でみんな健やかに。

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2023.10.13

お豆のコラム㉛ 北海道から収穫だより2023 -10月13日は豆の日、10月は豆月間-

 

北海道の産地を訪れた9月前半。日差しは強いものの風は爽やかに感じられ、異常な暑さに見舞われた今年の北海道に、やっといつも通りの晩夏が戻ってくる気配がありました。
今年は、豆の王国とも呼ばれる十勝の2つの地域から収穫だよりをお届けします。

 

 

十勝平野の中西部に位置する芽室町。面積の42%が農地、40%が山林という緑豊かなところで、町を流れる十勝川、芽室川、美生川などが肥沃な大地を形成しています。芽室では環境にも健康にもよい農業に取り組んでいます。緑肥や酪農畜産のたい肥を畑に使い、とれた作物を飼料として畜産に使用する循環型農業を行っています。また、豆類生産に対する意識も高く、全国に高品質な原料を供給しています。

JAめむろの穀類調整施設。生産者さんから集めた豆類や小麦を出荷する状態にするための工程を担う設備が整っています。右は豆類を保管する倉庫で、ひんやりと涼しく、適切な状態で保管されています。

舟渡秀博さんが所有している畑の広さは東京ドーム約12個分。小豆の面積はそのうち約20%を占め、他に小麦やビート(てんさい)、じゃがいも、とうもろこし、長芋などを輪作体系の中で栽培しています。※同じ畑で同じ作物をつくり続けると収穫量が低下したり、害虫や病気が発生しやすくなります。これを防ぐために、作物を入れ替えながら栽培することを輪作といいます。
舟渡さんが栽培している小豆は「きたろまん」という品種。2005年に北海道の優良品種に登録され、最近では北海道で一番多くつくられている品種です。
「今年の天候はとても大変だよね。生育期間を通して気温が高く、7月下旬からは最高気温が35℃を超える日もあって」と舟渡さん。畑を見せていただくと、莢(さや)の成熟は進んでいるものの、茎や葉はまだ青々としており、収穫のタイミングを見極めるのが難しいとのこと。色々とお話を聞きながら、天候や自然と向き合う生産者さんのご苦労をつくづく実感しました。
莢を割って見せていただくと、これから収穫される新物の小豆がこぼれ出てきました。
「9月13日が神社のお祭りで、いつも初物の小豆でお赤飯を炊くんだよ」と舟渡さん。新物のみずみずしい小豆で炊くお赤飯は本当においしそうです。

上段:小豆畑に立つ舟渡さん。下段:左から、莢がたくさん付いた今年の小豆の株。成熟した莢の中のきれいな小豆の粒。小豆を収穫する、とても大きなコンバイン。

児玉 渉さんは、ご先祖がこの辺りで早期に入植し、4代目となる生産者さんです。小豆、ビート(てんさい)、小麦、じゃがいも、長芋、枝豆を栽培しており、輪作体系を守り徹底した栽培管理のもとで作物を栽培しています。
「この辺り(芽室町)は地力があり、作物は何でもよく育つ。うちは昔から豆類を栽培していたね。今年は気温が高かったので生育は早く進んでいて、収穫は枯れあがり次第だね」と児玉さん。小豆は、葉の黄変と葉落ちが進んで枯れないと収穫作業に入れないため、その時期を見極めたいとおっしゃっていました。
その昔、小豆は生産量や天候の影響で価格が乱高下し、先物取引において「赤いダイヤ」と呼ばれた時代がありました。その頃は、生産者さんもその年の品質や収穫量、価格によって収入が大きく変動したそうです。現在、農地の改良や栽培技術の向上、冷害等に強い品種の育成により生産は安定しています。それでも、生産者さんの栽培に関する経験値の積み重ねや技術向上の努力が、毎年異なる天候の中でも良質な小豆を全国へ供給していることに変わりはありません。「小豆は栽培していておもしろい」とおっしゃる児玉さんから、北海道開拓時代から代々続く長い歴史の中で豆類栽培にたずさわってきた生産者の魂のようなものを感じることができました。

上段:小豆畑に立つ児玉さん。下段:左から莢と中の小豆の粒。児玉さんの畑もたくさん莢がついていました。児玉さんの農場入口の看板。芽室の各農場にはそれぞれ趣向を凝らした看板が設置してあります。

 

 

四季折々に絵葉書のような美しい景色を見せる十勝地方南部の更別村。人口約3,200人の村の基幹産業は農業で、東京ドーム10個以上の広さで大規模農業を展開している生産者が多く、食料自給率はなんと6,800%。まさに農業の村です。JAさらべつでは、化学肥料・農薬の使用を最小限にとどめ、たい肥などの有機物をつかった土づくりを基本として、豆がら(実をとったあとの莢や茎・葉)も細かく粉砕したり燃やしたものを畑に混ぜて使っています。環境に配慮したクリーン農業を展開して、安全で安心できる農畜産物を消費者に届けてくれています。

なだらかに広がる畑が美しい更別の風景。手前が豆畑。

 

子どもの頃から初代となるおじいさんの金時豆の栽培を手伝っていたそうで、「生まれた時から豆を見ていたのは間違いないね」と笑う、3代目の生産者・若園裕幸さん。豆類では小豆、金時豆、手亡を栽培しています。手亡は和菓子の白あんに多く使われている小ぶりの白いんげん豆です。「手亡は白さが命で、真っ白じゃないといけないんだよね。茎が倒れて雨が降るとすぐ豆が汚れてしまうし、収穫に使う機械もきれいにしておかないといけない。手亡を含め、白い豆はつくるのが本当に大変だよ」。
手亡は小豆と違って、コンバインで一気に収穫できません。まず、豆刈機という機械で根を切ってから、脱穀機で畑の豆を拾い上げて実と茎・葉などと分別するので、収穫時にも手間がかかります。
「しっかり耕して空気を入れ、微生物を元気にしてよい土をつくり、根の張りをよくする。そして輪作体系をちゃんと守ること。いい手亡をつくるにはこれが大事だよね」と若園さん。莢を割って見せていただいた手亡は、本当にきれいな白色でした。

上段:豆刈機で根を切る作業中の若園さん。下段左から、真っ白な手亡。大きなトラクターの後ろに繋がれているのが脱穀機。歯のようなもの(右上)で株を拾い、幹や葉を取り除き(右中)、莢も取り除いて(右下)実だけを上の赤い部分に貯めます。

森田孝弘さんは3代目、惇斗さんは4代目の生産者さんです。手亡は孝弘さんが物心ついたときからずっと栽培していたそうで、4代目となる惇斗さんにとって「手亡はつくってあたりまえのもの」なのだそうです。惇斗さんが「農協青年部で色々と勉強していますが、更別は手亡の生産量日本一なんですよ」と教えてくれました。
小さなときから遊びながら畑の手伝いをしていた惇斗さんは、孝弘さんの農業を継ぐことを昔から決めていたのだそう。「1年に1回しか結果が出なくて、去年を上回ることを考えてやった結果が出たときはやはりうれしいですね。やりがいがあります」とおっしゃっていました。
森田さん親子が栽培している豆類は、手亡のほかに金時豆と小豆。たい肥をつかった循環型農業を行い、輪作体系を守って安全でおいしい豆類を育てています。森田家では小豆はあんやお赤飯に、金時豆は煮豆に、そして奥様の知子さんが手亡で白あんをつくり、おしゃれなスイーツを手づくりされるとのことで、今後、ぜひ教えていただいて「お豆のコラム」で紹介したいと思います。
「豆類の新豆はおいしいよ」と孝弘さんがおっしゃっていました。もうすぐ令和5年産の新豆がお店に並びます。ぜひ味わってみてください。

上段:森田さん親子。右が孝弘さん、左が惇斗さん。下段:畑で作業中の惇斗さんと莢の中の真っ白な手亡。

 

毎年変わる天候に左右されても、培った経験値と技術でその影響を克服しながらいいものをつくる生産者さんたち。どっしりと地に足をつけて仕事する姿がかっこいいといつも思います。生産者さんが丹精込めてつくった豆類をおいしく食べて、健康な毎日をお過ごしください。

 

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