10月13日は豆の日。お豆でみんな健やかに。

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2021.02.23

お豆のコラム㉒ 小豆の煮方を極めた生産者さんに教えてもらう、小豆の煮方とお汁粉

 

2018年に、コラム「収穫だより」で北海道を取材したときのこと。北海道で3番目の小豆の産地であるJAようていの生産者さん、小山憲一さんが「妻がおばあさん直伝の小豆の煮方を極めた」とおっしゃっていました。小豆をよく知る生産者さんが極めた煮方ですから、これは見過ごすわけにはいきません。ぜひ教えていただきたいと小山憲一さんと奥様の恵さんにお願いをして、今回、実現することができました。教えていただいたのは、まず小豆の煮方。それと、この季節ならではのお汁粉の作り方です。

 

【JAようていの生産者、小山夫妻のあんライフ】

 

JAようていの小豆の生産者、小山憲一さんは甘党で「あんが本当に好き」なのだそう。お汁粉は粒あん、大福はこしあんというこだわりもあり、どちらのあんも奥様の恵さんが手作りしています。
「お汁粉、食べたいなぁと言ったら、この間も作ってくれたんですよ。うちはお餅も自分の家で搗くからね。何回も搗いて近所に配ったり。近くによもぎを摘んで分けてくれる人がいるので、よもぎ入りのお餅も搗きますよ。それであんを包んで大福にするとおいしいよね」と憲一さん。小豆を生産し、あんを手作りし、自宅でお餅も搗く。何もかもうらやましい限りです。
憲一さんは料理を一切しないそうですが、リクエストすると恵さんがすぐに作ってくれるのだとか。「ものすごくいい奥様ですね」と言うと、「まあ、そうかな」と照れておられました。本当にいいご夫婦です。

 

【小山恵さんの、小豆の煮方、お汁粉の作り方】

 

小山恵さんのお話を聞いて、なるほどと思うことが色々とありました。
恵さんの小豆の煮方とお汁粉の作り方、そして、その作り方で料理研究家の沼口ゆきさんが試作をしてくれた詳細を紹介します。水分を少なめにすれば粒あんになります。

 

<浸水。半分煮汁を変える渋切り×2回>

 

① 小豆は3倍の水で一晩浸水する。普通、小豆は浸水の必要がないと言われてるが、浸けたほうが煮る時間が短くて済む。
② 浸けた水のまま火にかけ、1回沸騰させる。沸騰時間は5分~10分程度。その後、煮汁の半分を捨てる。
③ 豆より少し多いくらいまで水を足し、再び5分~10分沸騰させ、また半量の水を捨てる。

POINT!:沸騰させて水を変える工程を「渋切り」と言います。和菓子屋さんはこの渋切りの仕方や回数でお店のあんの味を決めています。恵さんの渋切りは、小豆のクセをほどよく抜き、豆としての風味が立ってくるように感じられ、おいしく煮上がります。あまり水をたっぷり入れ過ぎないことがコツの1つです。小豆より少し高い水位で行います。

 

<砂糖の黄金比>

 

④ 小豆がかぶる程度に水を足し、沸騰したら、火加減を落として柔らかくなるまで煮る。この時の火加減は、くつくつとちょっとだけ煮たっている状態。途中で水が少なくなってきたら足して煮る。
⑤ 指で軽く押して潰れるくらいに小豆が柔らかくなったら、砂糖、塩を投入する。恵さんがたどり着いたあんの黄金比は、小豆一升(1.4~1.5kg)に対してザラメ1kg、白砂糖500g、塩はサラサラっと振り入れる程度。お汁粉の場合は、これよりザラメが多めで白砂糖は好みで少し足す程度。砂糖と塩は一緒に投入する。この時の水分量は、あんをつくるときは小豆より少し多いくらい。お汁粉の場合はそれより多め。さらっとしたお汁粉が好きな場合は水分を多めにするとよいが、多すぎると台無しになるので要注意。

POINT!:小豆一升はかなりの量。そこで沼口さんが小豆の分量2通りで試作してくれたのですが、「小豆200gと500gで試しましたが、500gのほうがはるかにおいしくできて、ここまで差が出るのかと驚きました」とのこと。500gでもけっこう多めですが、恵さんも「たくさんつくって冷凍しておけば、いつでもあんが食べられる」とおっしゃっていました。砂糖は、恵さんの黄金比通り、ザラメを小豆の重量の2/3、味見をして足りない分の白砂糖を加えます。お汁粉もあんも甘いほうが断然おいしいので、少し甘めと感じるぐらいにしたほうがいいようです。塩は多めに入れたほうがおいしくなります。写真は、つぶれ具合とさらっとしたお汁粉をつくるための水分量の目安です。

 

<とろみがつくるおいしさ>

 

⑥ 砂糖、塩を投入したら、おたまの裏で潰しながら、弱火で10分~30分程度煮る。豆の潰し方は半分潰すくらいで。長めに煮るのはとろみをつけるため。さらっとしたのが好きな人は、潰しながら煮る時間を短めにしてもよい。煮上がったら、すぐお汁粉にしてもよいが、1日おくと味がなじんでおいしくなる。

POINT!:お汁粉は少しとろっとした食感がおいしい。そのとろみは、小豆を潰しながら煮てつくります。どの程度とろみをつけるかは、残す水分量と煮ながら潰す時間によります。写真は、さらっとしたお汁粉を作るときのとろみの目安です。

 

お汁粉をつくるとき、小山家ではお餅をお汁粉に投入して一緒に煮るそうですが、市販のお餅は溶けてしまいそうなので、今回は焼餅入りにしました。小豆らしいコクや風味の具合がちょうどよく、市販のあんではわからない豆本来の味わいを感じられる、とてもおいしいお汁粉ができました。

 

おいしいお汁粉ができたので、沼口さんのアレンジレシピも紹介します。無調整豆乳をお好みの量加えるだけの簡単アレンジです。マイルドな味わいになり、温かくても冷たくてもおいしい。朝ご飯の一品として、また、小腹がすいたときの間食にもぴったりです。

 

今回はお汁粉の作り方を中心にご紹介しましたが、同じ手間をかけるのなら、おいしくできる多めの小豆でつくるのがおすすめです。水分を少なめにして粒あんに仕上げ、冷凍しておくと便利。水分を足せばお汁粉になるし、トーストにのせたり、アイスクリームに添えたり、一年中、食べたいときにおいしいあんを楽しめます。小山恵さんの作り方、ぜひ試してみてください。

 

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