10月13日は豆の日。お豆でみんな健やかに。

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2020.10.13

お豆のコラム⑳ 新豆を食べよう! 北海道の産地から収穫だより2020年版

 

秋の恵みが巷に出回り、私たちの気持ちと生活を豊かにしてくれる新豆の季節がやってきました。新豆のホクホクとした味わいは格別。今年は平年並みの出来だそうで、市場に出回るのが楽しみです。
今年の収穫だよりは、北海道網走郡大空町女満別(めまんべつ)を訪ねました。ここ女満別では、いつの間にか丹頂鶴のつがいが住み着いたということで、幸運にも遠目に見ることができました。つがいで生息する丹頂鶴が3羽いたということは、1羽は今年生まれた子どもに違いないでしょう。特別天然記念物の丹頂鶴が子育てをできる環境がこの地にはあると知り、温かな気持ちになりました。
「JAめまんべつ」では、現在、栽培・普及に力を入れている新しい品種があります。名前は「きたロッソ」。どんな豆なのか、生産者さんやJAめまんべつにお話を聞きながら調べてきました。

 

 

あいにくの雨模様でしたが、収穫直前のきたロッソの畑を見せてくれた眞鍋充さん。先祖がこの地に入植し、女満別で農業を始めてから3代目にあたる生産者さんです。
「豆は寒さに弱く、収穫時期に霜が降りると台無しになるので、秋になると寒暖差が大きくなるこの辺りは、昔は豆の適地じゃなかったのね。温暖化でつくれるようになった」と眞鍋さん。大学卒業後、すぐに就農し、お父さんの跡を継いだのは23年前だそうです。現在作っている豆は大豆、小豆、きたロッソの3種類です。
きたロッソをつくり始めた理由をうかがうと、「きたロッソは、JAから勧められて、色流れがしないし、収量も多いというのでやってみようと思った」とのこと。色流れというのは、金時豆栽培のリスクで、収穫前に大量の雨にあたるとあの赤色が流れ落ちてしまい、くすんだ色になったり、色むらが生じること。色流れが起こると一気に商品価値が落ちてしまい、生産者さんには大きな打撃となります。
きたロッソは色流れがしないというので、たくさん雨が降った畑でサヤを割って見せていただくと、きれいな赤色が鮮やかに保たれていました。
「色流れがしないという点でつくりやすいし、何よりもいいと思うのは、お袋に食べてみてもらったら“とてもおいしい”って言ったこと。豆を食べてきたお袋が言うんなら確かだなと思う。何というか、きたロッソは今までの豆とはちょっと位置付けが違う気がするんだよね。僕らも作り続けたいので、ぜひ一度、食べてみて欲しいですね」

 

左:眞鍋充さん。いい具合に色落ちしたデニムのつなぎがおしゃれです。右:きたロッソの畑で見せていただいたサヤ。畑はかなり濡れていますが、豆はつややかな赤色です。

 

きたロッソとはどんな豆?

 

きたロッソは、(地独)北海道立総合研究機構で10年の長い時間をかけて開発され、平成30年に登場した赤いんげん豆の新品種です。以下のような2つの大きな特長があります。
■下煮しても鮮やかな赤色が失われない
■下煮や調理のとき、皮破れがしにくく、煮崩れにくい
煮ても生豆のときと同じ色と形が保たれるので、赤の彩りを加え、栄養をプラスする食材として重宝しそうです。また、煮崩れにくいので、料理に使える可能性が広がります。赤いんげん豆の代表、金時豆は非常においしい豆で甘煮は絶品です。きたロッソはサラダやスープなどによく、また炒めてもとてもおいしい豆です。
きたロッソのおいしさについても科学的に立証されています。三大旨味成分のグルタミン酸がレッドキドニーの4倍、アミノ酸は2倍という分析結果が出ているそうです。
JAめまんべつの山田大さんによると「下煮したら、煮汁につけたまま一晩冷蔵庫においたほうがおいしくなります」とのこと。実際に試してみたところ、本当にその通りでした。ほとんどの豆は、煮立てが一番おいしく、煮上がりをみるために鍋からすくって食べていると、ほくほくとした食味と豆本来の風味がよく、止まらなくなってしまうほど。けれども、きたロッソは煮上がったばかりはそれほどでもなく、一晩おいたもののほうが旨味を強く感じ、さくさくとした食感があってとてもおいしいうえに、皮も硬くなっていないことに驚きました。今までにない、新しい豆の誕生です。

 

 

「豆を本格的に作り始めたのはおれの代から。最初は本当にド素人ですよ。やっと慣れてきました」と言う宮下雅治さん。祖先がこの地に入植して農業を始め、生産者として4代目にあたります。
作っている豆は金時豆ときたロッソ。きたロッソはJAの勧めで2019年から栽培を始めました。感想を聞くと、「やってみて一番よかった点は、やっぱり色流れがしないこと。商品価値が落ちないというのは作る側にとっては安心感があるよね」。
収穫したばかりの金時豆ときたロッソを見せていただきました。金時豆がふっくらしているのに対してきたロッソは少し細めなのがわかります。豆の味に関しては、「甘みはあまりないけれど、旨味が濃いよね」。宮下さんの弟さんが札幌でイタリアンレストランを経営しており、その弟さんに送って味を確かめてもらったところ、「おいしい」と評価は上々。メニューの開発を予定しているそうです。
「きたロッソは新しい豆なので、これからだよね。みんながきたロッソの名前を知って、食べてもらうことで色んな可能性が出てくる。煮ても色が鮮やかな赤ということと、旨味の濃さを活かした使い方がどんどん出てきて、豆の新しい世界が開けていくといいと思います」

 


左:「農業は楽しいですよ。自分の好きなようにやれるから」という宮下雅治さん。右:向かって左が金時豆。右がきたロッソ。どちらも同じ赤いんげん豆ですが、味わいはかなり違います。豆の個性がわかると食べる楽しさが広がります。

 

JAめまんべつの、おいしく食べる工夫

 

JAめまんべつのきたロッソの初収穫は2019年。さっそく商品化に取り組み、「めまんべつ産業開発公社」が調味料・保存料不使用のドライパックを開発しました。試食させていただきましたが、本当においしいです。何もつけずに、そのままぱくぱくいけます。携行可能な小さなパックなので、ちょっと栄養不足かなと思ったら、お弁当のおともにしたり、おやつやおつまみとして食べてもよさそう。サラダにトッピング、スープにちょい足しが気軽に、すぐできます。「僕の母のお墨付きをもらったので、ドライパックの出来には自信があります。既に、北海道のホテルでは、朝食のサラダやスープに使ってもらっています。僕のおすすめはかき揚げ。天つゆで食べてみてもらいたいですね」と、めまんべつ産業開発公社の福田重幸さん。
地元では、ドライパックを使ったパンも登場しました。ブランジェアンジュのオーナー、平岡映二・直子さんご夫妻が、きたロッソのドライパックを練り込んだ食パンを作りました。できる限り地元の材料を使っているそうで、小麦粉も女満別で採れた強力粉(種類は春よ恋)を使用。試食させていただきましたが、小麦と豆の味わいをしっかり感じる、おいしいパンでした。豆そのものに味がついていないので、サンドイッチにしてもよさそうです。

 

上:左が生豆。右が使い切りできる小袋のドライパック。どちらも大空町の「アンテナショップほのか」で販売されており、ネット購入・通販も可能です。下:ブランジェアンジュの豆パン色々。オーナーの平岡さん夫妻は東京出身で、北海道に来て、初めて豆パンを食べたそう。豆パンは北海道の定番だそうです。きたロッソの食パンは中にもたくさん豆が入っています。金時豆の甘煮のパンも、とてもおいしかったです。

 

取材させていただいた生産者さん、JAめまんべつ、めまんべつ産業開発公社は、きたロッソの一大産地を目指して力を入れています。2019年、女満別にはモダンな「オホーツクビーンズファクトリー」が完成しました。オホーツク管内の14の農協が団結して完成させたもので、高品質な豆を消費者に届けるための選別や異物除去等の最新設備を備え、巨大な低温貯蔵庫も完備しています。安心な国産の豆類を食べたいという消費者のニーズにもマッチしていますし、また、きちんと温度管理して保管されて劣化を抑えた豆を市場に送り出してくれることもうれしいことです。

 

オホーツクビーンズファクトリー。東洋一の規模を誇り、設計やロゴデザインにもこだわった素晴らしいファクトリーです。道路沿いの豆型の看板が目を引きます。

 

きたロッソが登場して、豆食の新しい可能性が、また広がります。それぞれの豆にそれぞれの味わいがあり、それを活かしたレシピを考えるのは楽しいことです。そして、栄養満点で健康を増進する食物繊維の豊富さは、どの豆も共通です。様々な豆料理で、食欲の秋を楽しみ、健やかな笑顔で食卓を囲んでください。

 

 

 

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