2017.12.06
お豆のコラム⑩ お正月の豆料理……小豆、赤・白いんげん豆
12月に入って、新年を迎える準備を始められた方も多いことでしょう。
新しい年にあたり、皆そろってお祝いの食卓を囲むおせち料理。いまのように様式が固まり、祝い肴三種が都市部から一般化したのは幕末と考えられています。
祝い肴三種の一つ、「マメで健康に」という願いを込めた煮豆。黒豆が定番となっていますが、他の豆料理も取り入れてみませんか。
今回は、赤い色に「陽力」があるとされ、古来よりハレの日に欠かせない豆、小豆の料理二種と、鮮やかな赤色の金時豆と、和菓子の材料になる白いんげん豆でつくる紅白きんとんをご紹介します。
(黒豆と小豆の記事はこちらから。白いんげん豆の正月料理はこちらから)
北海道の美しい街、美瑛町の生産者、喜多順一さんに聞く小豆
作物の色が波打つ絨毯のように美しい北海道の風景写真を目にしたことのある方も多いことでしょう。喜多さんの住む美瑛町は、丘の多い富良野の中でも丘の街として有名です。あのように美しいところにお住まいの感想をうかがってみると、「いやぁ、生まれたときから住んでいますから」と喜多順一さん。
喜多さんは4代目の生産者で、65ヘクタールの畑を有しています。畑は落葉樹の小高い丘にはさまれ、それぞれの区画が5ヘクタールずつの重畳畑になっており、豆、小麦、イモ、ビート(てんさい)などを輪作しています。輪作によって違う作物が育てられているため、あの美しい色の絨毯ができるのだそうです。
美瑛町の畑は、全体として保水性と傾斜地特有の排水性に恵まれ、良質の小豆がとれます。北海道産小豆にも色々な種類がありますが、喜多さんはじめ、美瑛町が力を入れているのが「しゅまり」という品種。小豆の産地、十勝地方とは異なる気候を持つ、美瑛町のある上川地方で栽培されています。独特の色や皮の薄さ、風味のよさから、和菓子の材料としても人気が高まり、美瑛町に近い旭川市の製餡会社、和菓子店やカフェでは、「しゅまり」を使った製品やメニューを提供して好評を博しています。
「『しゅまり』の特徴は、まず色が違います。砂糖を入れて煉ると濃くなりますが、煮あがったときは薄紫色をしています。この色を見て欲しいと思います。それから皮が薄いんですね。粒あんにしたときの、他の小豆とはまた違った食感を楽しんで欲しいですね」
甘党の喜多さんは、あんこも大好きだそう。「コーヒーも好きなのですが、コーヒーとあんこはとてもよく合うんですよ。本当は洋菓子も好きですが、最近は健康のためにも、糖質の代謝を促進するビタミンB1を多く含む小豆をよく食べます。煮上げただけの小豆にてんさい糖をふりかけて食べたりします」
鮮度のいい小豆は、ただ煮ただけのときに豆本来の何とも香ばしいいい香りがして、ほくほくした食感が最高です。砂糖を振りかけて食べる喜多さんの食べ方、とてもよさそうです。しかも北海道産の上品な甘さのてんさい糖をかけるなんてぜいたくですね。
薄紫色の小豆「しゅまり」。どんな色、味わいなのか、想像が膨らみませんか。小豆の皮の食感が気になる方にも、皮の薄い「しゅまり」を試してみていただきたいと思います。
美瑛町では、地元でつくった種豆だけで生産、低温倉庫で保存・管理しています。美瑛町の「しゅまり」の品質を守り、消費者によい状態で届くよう、しっかりとした取り組みを行っています。美瑛町の「しゅまり」は、美瑛町のアンテナショップ「美瑛選果」のネットショップなどで購入できます(「美瑛選果」で販売されている小豆は「しゅまり」です。平成29年産は12月中旬に入荷予定)。また、喜多さんたちが情報発信を行っている「JAびえい豆作生産部会」のfacebookでは、豆類の成長を美しい美瑛の風景とともに見ることができます。
「美瑛選果」 http://bieisenka.jp/index.html
「JAびえい豆作生産部会」 https://ja-jp.facebook.com/biei.beans/
お正月を祝う、小豆の料理二種と紅白の豆きんとん
ハレの日の豆、小豆がいかに尊ばれてきたのかは、お祝いに赤飯を炊くことでもよくわかります。お正月の一品に小豆の料理を加えて見ませんか。今回は、料理研究家の沼口ゆきさんが甘くない小豆入りの蒸し物、れんこんまんじゅうと、和菓子で見かける干し柿とあんこの組み合わせをアレンジしたものを考えてくれました。れんこんまんじゅうは、ほくほくした食感の三重奏。干し柿とあんこは王道の甘みの二重奏です。
加えて、赤い金時豆と白いんげん豆(今回は手亡)を使って、紅白の豆きんとんをつくりました。紅白の豆でお正月を演出してください。
[ 材料(4人分) ]
れんこん300g(正味250g)、塩小さじ1/4、上新粉25g、塩茹であずき大さじ2~3(茹でてから塩を少量加え、水をきる)、ゆり根12枚(大きいものは半分に切る)。
あんかけ:だし1カップ、うすくち醤油大さじ1、塩小さじ1/4、みりん大さじ1、水溶き片栗粉=片栗粉大さじ1強+倍量の水、柚子皮の千切り適量
[ つくり方 ]
1、れんこんは皮をむいて粗くすりおろし、ざるの上で自然に水気をきり、すぐに塩、上新粉を加えてよく混ぜ、茹でた小豆、ゆり根を混ぜる。
2、1を4等分して丸め、器にのせて6~8分蒸す(レンジの場合はラップをして約8分)。※つくり置きしたい場合は、蒸しあがった状態で冷凍する。
3、小鍋にだしを煮立たせ、塩、醤油、みりんを加え、水溶き片栗粉を加えてとろみをつける。1にあんをかけ、柚子の皮をのせる。
[ 材料 ]
干し柿(柔らかすぎないもの、ヘタをとって縦に切り開き、種があればとる)中4個、小豆あん大さじ1杯半、くるみ10g
[ つくり方 ]
巻きすの上にラップを敷き、その上に干し柿を広げて隙間なく一列に並べ、中央にあんこと胡桃をのせて巻く。冷蔵庫で冷やしてから切り分ける。
[ 材料 ]
金時豆、白いんげん豆各適量(それぞれ1晩水に浸ける)、グラニュー糖
[ つくり方 ]
1、金時豆は、煮上げて砂糖を加え甘煮にする。
2、白いんげん豆はやや柔らかく煮て、砂糖を加えながら豆を軽くつぶして練り上げる。
3、2に汁気をきった金時豆を加えてざっと混ぜ合わせる。
体によい豆類の料理を取り揃え、新しい年を祝い、マメで元気な1年をまたお過ごしください。