2018.10.12
お豆のコラム⑭ 新豆を食べよう! 北海道の産地から、収穫だより。2018年版
平成30年産の新豆の季節がやってきました。
9月には震災に見舞われた北海道ですが、その前には台風の強風があり、また低温・高温、長雨と今年の気候は異常で、豆類に限らず生産者さんは大変です。「そんな中でも、生産者さんはいいものをつくろうと、本当にがんばっているんですよ」と、各地の農業団体の方々が実感を込めて話しておられました。
気候風土を知り、地力を維持し、栽培に工夫を凝らし、労を惜しまない北海道の生産者さん。私たちの安心・安全で豊かな食は生産者さんの努力に支えられているんだと、つくづく思います。
採れたばかりの新豆は、煮えやすいうえに、みずみずしい味わいがあり、豆ってこんなにおいしいんだと、必ず実感していただけると思います。
さあ今年も、生産者さんが手塩に掛けた北海道産の新豆を、おいしくいただきましょう!
北海道で一番早く収穫できる黒豆の産地、旭川は、いま収穫期の真っただ中です。「気候は踏んだり蹴ったりだったが、よくこんなに実を付けてくれた。共同で農業を営む仲間が頑張ってくれた」と語るのは、農業生産法人の代表を務める鷲尾勲さん。
旭川の黒豆は「いわいくろ」という品種です。粒が大きく、きれいな丸みを持ち、寒暖差が育んだ甘味が特徴。旭川の黒豆は、いい豆を生産者さんにつくってもらい、より多くの消費者に食べてほしいという思いから『黒い恋人』としてブランド化されています。
「サヤに栄養が行くように丈を抑えるため、肥料はあまりやらず、根粒菌で育つようにしています」と鷲尾さん。根粒菌というのはマメ科の植物の根にいる土壌微生物で、植物の生育に欠かせない窒素を供給しています。植物が本来持っている力で黒豆を育てるように工夫なさっています。
(写真:上段左から鷲尾勲さん、大西勇治さん、小林知嗣さん。同じ農業生産法人の仲間たち。下段左は収穫を待つ黒豆のサヤ。実入りはばっちりです。下段右、旭川が誇る黒豆のブランド『黒い恋人』の袋を抱えていただきました)
「この頃やっと、黒豆ご飯が知られてきたが、まだまだ黒豆はお正月のものと思われている。もっと消費者の方に食べてもらいたいです」と鷲尾さんは話していました。黒い大豆ですから、栄養満点で、しかもポリフェノールも豊富。ぜひ、甘煮以外の料理法で食べてみてもらいたいと思います。本当に、旭川の黒豆は、豆が甘い!のです。2015年のコラム②「お正月の豆、黒豆と小豆」で、豆の甘味がわかる黒豆ご飯を紹介しています。
赤えんどうをご存知ですか? 豆大福に入っている、あの豆と言えば知らない人はいないでしょう。みつ豆の豆も赤えんどうです。
富良野の中で最も北に位置する上富良野町は赤えんどうの一大産地。国内の需要の6割が上富良野町でつくられており、東京の和菓子の名店でも使われているブランド品です。この上富良野町の赤えんどう、地域の史書によると、なんと1899年から栽培されているのだそう。
「この辺が赤えんどうの生産に向いた場所だったんでしょうね。赤えんどうは本当に栽培が難しく、すぐ花が落ちてしまうし、雨や気温に大きく左右されます。それから1回つくったら、8年は畑を空けないと採れなくなる。不思議だよね」と、お父さんの代から赤えんどうをつくり続ける宮島正志さん。
(写真:上段左、宮島正志さん。収穫を終えた赤えんどうの畑で。上段右、たくましい太い指の手のひらの上の赤えんどう。これが、あのおいしい大福の豆になります。下段:行ってみたいほど美しい、花の時期の赤えんどうの畑。ずっと向こうまで紫色の花!)
えんどう豆には青と赤がありますが、青えんどうの花は白、赤えんどうの花はピンクがかった美しい紫色です。「花の時期の畑はきれいですよ」と宮島さん。
ほとんどすべてが、豆大福、みつ豆、落雁など和菓子の材料となる赤えんどうですが、宮島さんやJAふらのの方は、消費者にもっと赤えんどうを食べてもらいたいと言います。今度、コラムでもぜひ取り上げたいと思います。
富士山に似た姿から蝦夷富士と呼ばれる羊蹄山のふもと一帯が管轄のJAようてい。農協としては北海道で3番目の小豆の産地です。羊蹄山のおかげで気候が安定し、また、羊蹄山の伏流水によってミネラル分の多い土壌に恵まれ、風味の強い小豆が採れます。わざわざようていの小豆を指名して買う和菓子屋さんもあるのだそう。JAようていでは、この小豆を『ようていブランド』として推していきたいと考えています。ようていの小豆を煮てみると、本当に微かですが塩味もあるような、複雑で力強い風味を感じます。これでつくった粒あんは、小豆好きにはたまらない味わいになるでしょう。
小山憲一さんは、JAようてい管内で小豆をつくって4代目の生産者さんです。東京ドーム7.5個分という広大な畑をお持ちで、撮影したのは羊蹄山を背後に見る小豆畑。「ここは、羊蹄山の火山灰でできた黒土なんだけれど、作土(耕作が行われる部分の土)が浅くて20cmしかないから、下の土を出さないように上の20cmで勝負しているんだよね」とおおらかに笑う小山さん。広大な畑地は場所によって土壌が異なるため、そこに合った肥料設計を行って、工夫を凝らして小豆をつくっています。
(写真:上段、小豆畑の小山憲一さん。後ろに見えるのが雲のかかった羊蹄山。下段:左、収穫目前の小豆畑。中、小山さんのご自宅入り口の看板。40年、ここに立っています。右、小山農場の近くにある、非常に美しい観光スポット「京極のふきだし湧水」。羊蹄山の雪が何十年もかけて湧き出しており、1日の湧水量はなんと30万人の生活水に匹敵する8万トン。「名水百選」にも選ばれています。この水がようていの小豆を育んでいます)
「あんこ、好きですよ。本当に好きですね。あんこと牛乳、これが最高なんだよ。妻があんこをつくるんだけど、おばあさん直伝の煮方で、やっと上手に煮られるようになったと言っていました」ということで、奥様の恵さんにもお話をうかがいました。憲一さんは、大福はこしあん、お汁粉は粒あんとお好みがあるそうで、そのリクエストに応えてつくり分けている奥様はすごい! 今度、ぜひ、恵さんにあんこの作り方を教えていただきたいと思います。
北海道だけではなく、今年は、豪雨、台風、地震と、全国の生産者さんが大きなダメージを受けました。一番の支援は、買っておいしく食べること。北の大地の恵み、平成30年産の豆をぜひご家族で召し上がってください。