2024.10.13
お豆のコラム㊱ 新豆を食べよう! 北海道の産地から収穫だより 2024 ―10月13日は豆の日、10月は豆月間―
まだ日中は暖かいですが、夜はだいぶ涼しくなり、秋らしくなってきました。豆類の産地、北海道では、収穫が大詰めを迎えています。10月13日の「豆の日」にちなんだ今回のコラムでは、オホーツク地域の小豆についてご紹介します。
北海道の北東部に位置するオホーツク地域。オホーツク海に面した280㎞もの海岸線を有し、総土地面積は北海道の12.8%を占めます。これは、秋田県や岐阜県とほぼ同じ大きさだそうです。知床や網走国定公園などの世界遺産、流氷砕氷船で有名な紋別や網走もオホーツク地域で、豊かな自然に恵まれたところです。味覚ではカニやホタテなどの海の恵みが有名ですが、大地の恵みも豊か。耕地面積 は北海道の14.5%を占め、小麦、てんさい、じゃがいも、玉ねぎが主要な農産物ですが、豆類の生産も多く、近年では豆類の新興産地として期待されています。
オホーツク地域でつくられている主な小豆は「エリモ」と「きたろまん」。「エリモ」は、日本の小豆の代表格とも言える品種です。老舗の和菓子店などでは、風味がよいと言われる「エリモ」にこだわっているところも多いのだとか。「きたろまん」は、この頃、作付面積を増やしている品種で、「エリモ」に比べて若干大粒でややあっさりした風味を持ち、ポリフェノールが他の小豆より豊富に含まれています。
和菓子やあんこが好きな方の中には、この2品種を品種別に味わってみたいと思う方もいらっしゃるでしょう。そんな時は、雑穀店で聞いてみてもいいですし、ネット通販なら容易に品種を指定して購入することができます。
左がエリモ、右がきたろまん。
高温に見舞われた昨年は厳しい年でしたが、今年は暑い日が多かったものの、お盆明け以降は北海道らしい気温になったため、出来はよいそうです。新豆が市場に出回るのが楽しみです。
上:エリモの畑と、もうすっかり仕上がった莢。下:きたろまんの畑と莢。収穫までもう少しですが、莢がたわわに実っています。※仕上がりの状態は畑によって差があります。
オホーツク地域でつくられている小豆は、「オホーツクビーンズファクトリー」に集められ、多くの工程を踏んで調整・加工され、市場へと送り出されます。「オホーツクビーンズファクトリー」は、オホーツク地域の豆類生産向上とブランド化を目指し、オホーツク地域の14農協が団結して建設した、近代的な調整工場です。品質管理・安全管理に先進的なシステムを導入しているこの施設から、おいしくて安心な豆類が出荷されていきます。
延べ床面積として北海道最大の広さを誇るオホーツクビーンズファクトリー。2018年に操業を開始しました。
地産地消にこだわり、オホーツク地域の「きたろまん」でおいしい和菓子をつくり続けている、網走郡大空町の和菓子屋さん「すがの商店」。店主・菓子職人の菅野慎治さんにお話をうかがいました。
「『きたろまん』は、『エリモ』より若干大粒で、粒がしっかりしているので、そこを活かして粒あんを炊いています。小豆本来の味を引き出しつつ、少し水分を残すように炊き上げるのですが、その日の気温・湿度によっても変わってくるので、炊き過ぎには気をつけています」
菅野さんは、先代であるお父様からあんの炊き方について厳しく仕込まれたそうで、今、菅野さんが教えている若い職人さんにもそれを伝えていきたいとおっしゃっていました。豆の状態はあんを左右するので、管理の行き届いているJAこしみずさんに保管してもらって、必要な分だけ入手するようにしているそうです。「やはり、あんを褒められるのが一番うれしいですね」と菅野さん。オホーツク地域の「きたろまん」を使った「すがの商店」の和菓子。機会があったら、ぜひ味わってみてください。
上段左:「すがの商店」の外観。上段右:粒あんが詰まった「おやき」は催事限定商品。キッチンカーで、その場で焼き立てを販売しています。また、流氷砕氷船おーろら号の時期には、乗船受付前で「おーろら焼き」と名づけて販売。最近では海外からの旅行客にも大人気です。下段左:「きたろまん」のあんを炊く菅野さん。気温や湿度に左右されるあんを、その店の変わらぬ味に仕上げるのが和菓子職人の腕の見せどころです。下段右:オホーツク地域の銘菓として人気の「生どら焼」と「おやき」。
菅野さんは小豆の新豆について「やはり炊き上がりが早いですね。色も若干浅く、みずみずしい感じがします」とおっしゃっていました。
令和6年産の小豆がもうすぐ出回ります。小豆の新豆には新ものならではのおいしさがあります。これから少しずつ寒くなり、小豆を炊く湯気や香りの心地よい冬がやってきます。令和6年産の小豆を見つけたら、コトコト煮て新豆ならではのおいしさを楽しんでください。