10月13日は豆の日。お豆でみんな健やかに。

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2016.09.19

お豆のコラム⑥ 「おはぎを手づくりしましょう」

おはぎ、お好きですか?
春と秋のお彼岸の頃にいちばん店頭に並ぶおはぎですが、和菓子屋さんやスーパーで年中買うことができます。お米と小豆だけでできているシンプルな食べ物なのに、なぜ、こんなに愛されているのか。そう思うと、おはぎって不思議な食べ物です。
古来より小豆は、その赤色が邪気を祓うとして、ハレの日や節供に欠かせない重要な食べ物でした。その小豆と、やはり古くからの重要な年中行事であるお彼岸が結びついて、お彼岸におはぎを食べるようになったといわれています。お彼岸にかかわらず、広く庶民に食べられるようになったのは江戸時代だとか。
以下は、江戸時代のおはぎの呼び名いろいろ。
おはぎ……つぶし餡の皮が点々と散っている様子が萩の花に似ているところから付いた呼び名。江戸時代の女官たちがそう呼んだことに由来するといわれています。
ぼたもち……ぼってりしたかたちが牡丹の花に似ているとして付いた名前。
隣知らず……ぼたもちというのに、餅を搗く音がしないから、隣家がつくっていることがわからないうちにできあがるため。
夜船……「着く」と「搗く」を引っ掛けて、いつ、どこへ着くのかわからない夜の船にたとえたもの。
ほかにも様々なものがあり、江戸の庶民におはぎがとても親しまれていた様子がうかがえます。おはぎ、昔から愛されていたんですね。
つい買ってしまうおはぎですが、手づくりは本当においしい。餡の味も自分好みに決められますし、つくった日はお餅がなんともいえない柔らかさで、ほっとするようなやさしい食感です。
今回は、十勝地方更別(さらべつ)村の小豆の生産者さん、石井教子さんの知恵をお借りして、おはぎの手づくりをご紹介します。

ishii十勝地方更別村の石井さんご夫婦。後ろ右側が種をまいて1カ月足らずの小豆の畑。

 

小豆をよく知る、更別村・石井農園の石井教子さんのおはぎのつくり方

 

日本の食を支える十勝地方にあって、総面積の70%が耕地という更別村。堆肥などの有機物を使った土づくりを行い、環境に優しく安全な農業に取り組んでいるところです。「昼夜の寒暖の差が大きいから気候もぴったり。堆肥がすばらしいから地力がいい。だからいい豆がとれるんだよ」と石井農園の石井祐一さん。2016年、小豆で農林水産大臣賞(全国豆類経営改善共励会、「小豆・いんげん・落花生の部」最高賞)を受賞した、優れた技術と経営手腕の持ち主です。
奥様の教子さんにうかがうと、様々な小豆の食べ方をなさっておられるようで、小豆茶も手づくりされるそう。もちろん、おはぎも手づくり。「祐一さんは甘いものもお好きですか?」と聞くと、「お猪口1杯もお酒が飲めない人(笑)。おはぎも好きですよ」と、笑っておっしゃっていました。
教子さんは、粒餡と漉し餡、両方のおはぎをつくられるそうですが、今回は粒餡だけに絞って、以下の3点を詳しく教えていただきました。

【小豆を煮る】
小豆は、土用を過ぎると硬くなるので、あらかじめ2〜3倍の水に浸けておく。まず、渋切りをする。浸けておいた水のまま火にかけ、煮立ったら少しぐらぐらさせてからざるにあけてお湯を捨てる。これを2回行う。小豆がたっぷりかぶるくらいの水加減で火にかけ、煮立ったらコトコトと、軽く小豆が踊るくらいの弱火で煮る。水が少なくなったら途中で足す。小豆を一粒、親指と小指で挟んでつぶれるぐらいが煮上がり。
教子さんおすすめの方法は、ポットを使う方法。ポットに洗った小豆と熱湯を入れて1〜8時間(小豆の状態による)おいてから煮ると、とてもらくに煮えるそうです。

【粒餡をつくる】
煮上がった小豆をざるにあけて湯を切る。鍋に小豆と砂糖を入れて火にかける。教子さんは小豆の煮豆200gで砂糖180g〜200gと甘さ控えめ。砂糖をなじませてから、ヘラで鍋底から返すようにしながら煮て、水分をとばす。煮上がる前に、指3本でひとつまみの塩を隠し味に加える。冷めると硬めになることを考慮して、鍋底をヘラで引いたとき、流れてこない程度の柔らかさで火を止める。

【お米を炊く】
もち米とうるち米半々というつくり方もありますが、教子さんはもち米のみ。もちもちと柔らかい食感では、やはりもち米のみが勝ります。炊くのは炊飯器で、気にするのは水加減ぐらい。事前に2時間ほど水につけておいた米を炊飯器に入れて、寝かせて置いた箸1本分がかぶるぐらいの水加減がいいそうです。
教子さんは、米2〜3合にひとつまみの塩を加えます。「えっ? 塩を入れて炊くの?」と思った方もいるのでは? 教子さんは「え? 入れないの?」とおっしゃっていました。この件、検証してみましたので、後ほど。

これで準備は完了です。お米のつぶし具合はお好みで。ご飯を丸めて、餡で包んでできあがりです。

 

手づくり、出来たては違います。おはぎをつくりましょう。

 

石井教子さんに教えていただいたつくり方を取り入れて、おはぎをつくってくれたのは、料理研究家の沼口ゆきさん。沼口さんはもち米とうるち米半々でつくるそうですが、今回は教子さん流でもち米のみのおはぎをつくりました。

皮まで柔らかい小豆の煮加減は写真の通り。餡は教子さんと同じように、小豆300gに砂糖270gで、塩をひとつまみかふたつまみ加えます。炊きあがったお米は、いわゆる半殺しに(半分くらいつぶすこと)。炊飯器で炊いて、炊けたらすぐに木ヘラで混ぜるぐらいでも写真のようになります。このときの水加減は、お米2合に対して、炊飯のラインよりやや少なめ(すし飯ライン)です。
もち米ですが、お米2合に塩をひとつまみ入れたものと入れないもの、両方を用意してみました。まず、つぶしたおこわだけを食べてみました。こんなに違うのかと驚きました。塩なしは素直なお米の味、塩ありはおはぎという和菓子の材料の味という感じです。おはぎにして食べ比べても、はっきり違います。「塩を入れると、おこわの味わいに深みのようなものが出て、コクのあるつぶし餡になじみがよくなるようです」と沼口さん。興味を持たれたら、ぜひ試してみてください。


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おはぎには、餡の代わりに黒ごま、きな粉、ずんだをつかったものなどいろいろありますが、沼口さんのおすすめは、おこわで餡を包んで外にナッツをまぶしたもの。ナッツのコクが餡とよく合って、食感も楽しいおはぎです。餡でおこわを包む場合は、餡とおこわ3:2ぐらいですが、おこわで餡を包む場合は分量を逆にするといいそうです。今回はスライスアーモンドとクルミを混ぜて使っていますが、ピーナッツでもおいしい。

 

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小豆は、健康と若さ、美しさを保つためによい成分をたくさん含んだ食品です。多めにつくって、すぐに冷凍しておけば、自然解凍でいつでもおいしいおはぎを食べることができます。ほっとする味わいのおはぎを、お彼岸だけではなく、いつでも召し上がってください。

 

 

 

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