2024.05.27
お豆のコラム㉞ 郷土料理に学ぶ、栄養たっぷりの豆入り混ぜご飯
今回のお豆のコラムは、郷土料理を参考にしたレシピを2品紹介します。
昨年、一昨年の10月に行った豆の日プレゼントで、応募いただいた皆様から豆を使った全国の郷土料理をたくさんお寄せいただきました。本当に多様な料理があり、あらためて先人の知恵には驚かされ、現在の食生活にも取り入れていきたいものが多くありました。そこで、今回は郷土料理の中から豆を混ぜ込んだご飯ものを取り上げます。
実は、豆類を混ぜたご飯は栄養バランス的にも優れています。体をつくるたんぱく質は20種類のアミノ酸からできており、そのうちの9種類は必須アミノ酸と呼ばれ、体内でつくれないために食物から摂取しなければなりません。必須アミノ酸のうち、ご飯(精白米)に少ないものはリシンですが、豆類はリシンを豊富に含んでいるので、ご飯に豆を加えることで必須アミノ酸のバランスを改善することができるのです。
料理研究家で管理栄養士でもある近藤幸子さんに、伝統的なつくり方をアレンジしたレシピを考えていただきました。もりもり食べられるおいしいレシピに仕立ててくれました。
【 広島県 「もぶり」 】
広島の「混ぜる、混ぜ込む」の方言「もぶる」に由来する料理で、黒豆と様々な具材を使った混ぜご飯です。地域や時期で混ぜ込むものが異なるそうで、農作業のときにおかずがなくても栄養がとれて手軽に食べられる食事として、また、祝い事や法事などのちょっとしたごちそうとしてつくられているそうです。
近藤さん:黒豆に加えて他のたんぱく質や、野菜や根菜なども入れれば栄養バランスのよいご飯になります。今回はベーコンを使ってコクを出し、子どもからおとなまで好まれる混ぜご飯にしました。炊き込みではないので手軽につくることができて便利です。お弁当にする場合は、彩りでゆで卵やミニトマト、ブロッコリーなどを添えるといいでしょう。
[ 準備 / 黒豆を煮る ]
材料:黒豆150g 水3カップ 砂糖150g 塩小さじ1/4
① 圧力鍋に水を入れ、火にかける。沸騰したら、さっと洗った黒豆を加えて火を止め、蓋をして4~5時間おいておく。
② 蓋を開けて砂糖と塩を加え、再び蓋をして20分加圧したら、冷水をかけて急冷する。
③ 圧が下がったら蓋を取り、紙蓋をして中弱火で30分ほど煮詰める。あまり煮詰めすぎないように気を付ける。
※圧力鍋がない場合は、厚手の鍋を使い、②③で3~4時間ほど弱火で煮る。
[ もぶり ]※大き目のおにぎり3個分
<材料>
温かいご飯2膳分(350g) 黒豆煮100g 厚切りベーコン50g レンコン50g いんげん5本 A:水1/2カップ、しょうゆ・みりん各大さじ1
<つくり方>
① ベーコンは7㎜幅、れんこんは皮をむいて薄切り(大きければ半月か銀杏に切って薄切り)、いんげんはヘタを落として斜め薄切りにする。
② 鍋にAと1を入れ、沸騰したら中火で煮汁が少し残る程度まで煮る。
③ 温かいご飯に②と黒豆を加えて混ぜる。
【 徳島県「金時豆入りばら寿司」 】※今回は大納言使用
徳島県はもともと米が育ちにくかったため、さまざまな具材をたっぷり加えてご飯の量を増やそうとしたことが、この郷土料理の始まりだといわれています。地域や季節によって使う食材が異なり、また、「ばら寿司」以外に「まぜくり」「かきまぜ」「おすもじ」など様々な呼称があるそうです。
近藤さん:このレシピでは、金時豆より食感がさらっとしていて、かつ小豆よりも存在感がある大納言を使いました。大納言は、ほんの少し硬めに煮上げたほうがいいようです。軽い甘みのある大納言が酢飯とよく合い、こんにゃくやちくわ、ごぼうの甘辛さ・食感の違いが楽しく、いくらでも食べられます。紅生姜があると味わいが引き締まってよりおいしくなるので、必ず添えてくださいね。
[ 準備 / 大納言を煮る ] ※つくりやすい分量
材料:大納言150g 砂糖120g 塩少々
① 鍋に水4カップと大納言を入れて火にかける。沸騰したら中火にして3分ほど煮てから煮汁を捨てる。
② 豆の重さを計り、3倍量の水と豆を鍋に入れて火にかけ、沸騰したら弱火にして落し蓋をして弱火でコトコトと1~1時間半ほど煮る。途中、水が少なくなったら足して、常に豆が完全に浸かっている状態で煮る。
③ 食べてみて柔らかくなったら(煮崩れるまで煮ないで、ちょっと硬めがベスト)、砂糖と塩を足し、さらに弱火で10分ほど煮て火を止め、粗熱をとる。
[ 大納言入りばら寿司 ]※2~3人分
<材料>
大納言煮100g ちくわ2本 ごぼう40g 人参40g こんにゃく50g
米1合(または熱々のご飯350g) 炒り卵 (卵2個、砂糖小さじ1、塩少々) 紅生姜適量
A:水1/2カップ しょうゆ大さじ1.5 みりん大さじ1 砂糖大さじ1/2
すし酢:米酢大さじ2 砂糖大さじ1 塩小さじ1/3
<つくり方>
① ちくわは薄い小口切り、ごぼうは縦半分に切って斜め薄切り、にんじんはスライサーで千切りにする。こんにゃくは食べやすい大きさの薄切りにする。
② 鍋にAと①を入れ、沸騰したら中火にして8分ほど煮汁が少し残るぐらいまで煮る。
③ ご飯は普通に炊き、蒸らし終わったらすぐにボウルに移し、すし酢の材料を混ぜ合わせたものを回しかけて混ぜ、濡れ布巾をかけて5分ほどおいて味をなじませる。②と大納言を加え、再び濡れ布巾をかけて粗熱がとれるまでおいておく。
④ 炒り卵の材料を合わせ、小さめのフライパンに油少々を熱して流しいれ、菜箸で常に混ぜながら火を通す。
⑤ ③を器に盛り付け、④を散らして紅生姜をのせる。
1人で少量の酢飯を粘りの出ないようにつくるコツは、しゃもじに添わせてすし酢を回しかけたら、底から返すように大きく混ぜたのち、濡れ布巾をかけて酢飯を休ませること。具材を混ぜる時も同様に大きく返しながら混ぜて、濡れ布巾をかけて落ち着かせます。
今回の近藤さんのレシピは、どちらも手ごろな材料でつくることができる上に、とてもおいしくて食が進みます。あらかじめ煮て冷凍しておいた豆を電子レンジで解凍して使えば簡単につくれるので、お弁当にも向いています。
先人の知恵が生んだ豆を使った郷土料理。ぜひつくってみてください。
参考:農林水産省webサイト「うちの郷土料理」