10月13日は豆の日。お豆でみんな健やかに。

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2016.08.10

お豆のコラム⑤ お豆の種類「和菓子の材料、福白金時」

煮豆に、スープや煮込み料理にと、様々な料理に使いやすくて大活躍の金時豆。もしかすると一番親しみのある豆かもしれません。そんな金時豆に白い品種があることをご存知ですか? 実は、市場では赤系の銘柄が「金時豆」、白系は「白金時豆」と呼ばれています。白金時豆にもいくつか種類があるのですが、今回紹介するのは「福白金時」。産地はもちろん北海道です。
ちょっと福白金時をネットで検索してみてください。どうでしょう? 和菓子関連でたくさん情報がヒットしませんか? しかも、あの名店の材料にも、あのおいしいと評判の和菓子の餡にも福白金時の名前が。そうです。福白金時は和菓子の材料として多く使われています。しかも、和菓子屋さんや和菓子ファンの中での評価は上々。栽培がむずかしいため生産量が少なくなり、一時は和菓子屋さんも手に入らない時期もあったそうです。
下の写真が福白金時。ふっくらとして、年代を経た磁器のようなしっとりとした乳白色。その味わいはというと、金時豆とはまた違った、繊細で豊かな香りと風味を持ち、非常においしい豆です。皮もそれほど硬くないので、つぶれるぐらい柔らかく煮て甘煮にすると、まるでつぶし餡の白餡。そのままお菓子代わりに食べられます。

 

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栽培のむずかしい福白金時を、親子2代でつくり続ける、
北海道・十勝、音更(おとふけ)町の山﨑康幸さんに聞く

 

日本の豆の生産を一手に担う北海道・十勝の真ん中にある音更(おとふけ)町は、昼夜の寒暖の差が大きく、作物の仕上がりのよいところ。その音更町で、お父さんの代から30年、福白金時をつくり続けているのが、山﨑農園の山﨑康幸さんです。
「品種になった1960年代以降、後継種がないから、昔ながらの金時の性質を持っているのが福白金時。品種改良されていないからつくりづらいのが特徴。強い風が吹くと折れやすいんだよね」と山﨑さん。
山﨑さんのお父さんは、常に3〜4種類の珍しい豆を楽しんで栽培されていたそうで、山﨑さんもそれ引き継いで様々な豆をつくっています。福白金時のほかに、北見白金時、黒ささげ、パンダ豆。見たことも聞いたこともない豆に興味をそそられます。しま小豆という小豆もあるのだそうです。
実は、一般的に流通しているもの以外にも、豆には非常に多くの種類、品種があります。そして、それらは品種と産地が異なれば味わいも変わるのだとか。一口に豆と言っても、奥が深いなと感じます。そういう豆の栽培を、お父さんと同じく、山﨑さんも楽しんでおられるようです。「福白金時が折れやすいと言っても、自然が相手だし、見守るしかないよね」とおおらかにおっしゃっていました。山﨑さんのお宅では、やはり煮豆にすることが多いという福白金時。お正月に黒豆と一緒に食べたりもするそうです。

 

(下写真:山﨑康幸さんと、種をまいてから1か月ほどの福白金時。腰くらいの高さまで成長します。奥の林までずっと福白金時。見事です)
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和菓子の材料になる福白金時で、ヘルシーな夏のデザートはいかがですか?

 

味わい深く、非常においしい福白金時。豆を手に入れてオリジナルの夏のデザートを手づくりしてみませんか? 今回、デザートを考えてくれたのは、料理研究家の沼口ゆきさん。豆を煮て、試食してみた沼口さんも「おいしい豆」と高評価でした。検索して見つけたお店の和菓子でも、ぜひその実力を実感して欲しいのですが、自宅で煮上げた豆でつくるデザートは、また別もの。簡単につくることができる3品を、今回はご紹介します。
まず、基本の材料となる煮豆をつくります。豆の量の3倍の水に一晩浸けた福白金時200gを、グラグラさせずにコトコトと煮ます。柔らかく煮えたら、グラニュー糖150g(なければ上白糖でも可)を加え、半量は豆が煮くずれないようにさらっと煮上げ(①)、半量はかなり柔らかく煮上げます(②)。これで豆の準備は完了です。すぐ使わない分は冷凍保存しましょう。

 

【福白金時とスイカのみつ豆】
見た目にシンプルですが、びっくりするほどおいしいので試してみてください。福白金時の上品な風味、スイカのシャリシャリ感、寒天のつるんとした心地よさ。口の中が食感と味わいの三重奏。あとを引くおいしさです。つくり方もかんたんです。水550cc、粉寒天4g(一袋)で普通に寒天をつくります。スイカは1cm角切りの種をとったものを適量。煮豆①適量。写真では水100ccに砂糖45gでつくった白蜜を添えていますが、黒蜜のコクが好きな方はぜひ黒蜜で! おすすめです。

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【福白金時の栄養満点アイス】
凍った福白金時を、試しにかじってみたらおいしかった! ならば、アイスにしましょうとつくったのがこれ。材料は煮豆②1カップ、牛乳1カップ、砂糖大さじ2、生クリームカップ1/2。これらを混ぜて凍らせ、途中3〜4回混ぜて再び凍らせる行程を繰り返してできあがり。あえて豆の粒を残していますが、小さなお子さん向け、または滑らかなアイスにしたい場合は、豆をフードプロセッサー等で細かくしてもいいかもしれません。よりあっさりと仕上げたい場合は、生クリームの量を少なめにしてみてください。たんぱく質、ビタミンB1・B2・B6、カリウム、カルシウム、鉄分豊富な福白金時に、さらに牛乳も使っているので栄養は太鼓判。健康と美容のために栄養面で申し分ない冷たいデザートだなんて、ちょっとうれしいですよね。

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【福白金時の冷やし汁粉】
②の煮豆をザルで濾して、ミネラルウォーターで好みの甘さにのばし、氷を浮かべただけ。食欲のないときでもこれならいただけます。白い豆の冷やし汁粉といえば白小豆を使ったものが有名ですが、それに比べて福白金時の冷やし汁粉はクリーミーな味わいです。お好みで牛乳で割ったりしてもいいかもしれません。

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福白金時は、普通のスーパーなどでは見かけない豆ですが、ネットショップなどで入手できます。和菓子の材料になるおいしい豆で、この夏は、ぜひ栄養のある冷たいデザートを手づくりしてみてください。


和菓子の白餡のこと

 

和菓子の餡といえば、やはり小豆の餡を思い浮かべる方が多いことでしょう。白餡と言われてもピンとこない方も多いかもしれません。それでは、これらはいかがでしょう。たった一つの菓子に四季折々の風雅を閉じ込めた上生菓子。卵の風味と口溶けのたまらない黄味しぐれ。抹茶や柚子の風味を付けた季節の羊羹。これらはすべて白餡を使っていますし、お饅頭にも白餡のものがたくさんあります。白いがゆえに色を付けやすく、小豆よりもあっさりしているゆえに香りや風味を付けやすい。それが白餡。和菓子の多彩な世界をつくり出す重要な役割を担っています。
白餡の材料は、主に白系のインゲンマメです。今回紹介した「福白金時」のほかに、多く使われているのは「手亡」。インゲンマメは蔓性のため、栽培には支柱の「手助け」が必要なのですが、手亡は半蔓性で支えが要らず「手助けがいらない」ため、手亡という名前が付きました。その他にインゲンマメでは大振りの「大福」、高級品と言われる「白小豆」などが使われます。
いつものお店の、変わらず好きなお饅頭で楽しむ。季節の変わり目に名店をのぞき、風流な菓銘(菓子の名前)の付いた上生菓子を買ってみる。豆本来の風味が味わえる白餡のどら焼きもおいしい。白い豆から生まれた白餡の和菓子の豊かな世界を、折に触れて楽しんでください。

 

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