10月13日は豆の日。お豆でみんな健やかに。

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2016.07.03

お豆のコラム④ お豆の種類「煮豆の王様、虎豆」

茶色の模様が虎に似ていることから、この名前が付いた虎豆。まるで乳白色の肌を持つ女性が茶色の毛皮をまとっているようで、なかなかおしゃれです。虎豆は、豆類の中でも一番種類の多いインゲンマメの仲間で、栽培に手間がかかる高級品とされています。たんぱく質を多く含む一方で脂質をほとんど含まず、栄養に富み、特にビタミンB1、B2、B6、カルシウムが豊富。健康や美容のために、他の豆類同様にもっと食べたいお豆です。
虎豆は「煮豆の王様」と呼ばれています。できたての虎豆の煮豆をほおばると、そのおいしさに笑顔がこぼれ、夫婦喧嘩もおさまるといわれるほど。こんな話を知ると、どれほどおいしいのか、食べてみたくなりませんか?。

 

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ふっくらした虎豆と、つやつやつとしておいしそうな虎豆の煮豆。


フレンチレストランのシェフを経験した異色の生産者、

石川修さんに虎豆のおいしさ、煮方をおしえてもらう。

 

北海道北見地方の内陸に位置する訓子府(くんねっぷ)町。全国有数の高い日照率が虎豆の栽培に適しているそうで訓子府町の特産品の一つとなっています。その訓子府町で虎豆を生産している石川修さん。前職は旭川市のフレンチレストランのシェフ、その後実家の農業を継いだ三代目という異色の経歴の持ち主です。石川さんが生産する虎豆は、品質の高さや農業への取り組みが評価され、農林水産大臣賞を受賞したこともあります。
その石川さんに、虎豆の特徴をうかがってみました。
「香りと風味がとてもよい豆です。えぐみの少ないことが特徴で、味付けをしていない煮豆をそのままつまんでもおいしいですよ」
ところで、虎豆は上手に煮るのがむずかしいとも言われます。煮方によっては、煮くずれが多くなったり、皮が硬めに煮上がったり。シェフだった石川さんに、ぜひ煮方のコツを教えていただきましょう。
「虎豆はえぐみが少ないので、あく抜きの茹でこぼしをしないで、風味を残して煮上げます。豆は下から順に実がなっていきますし、同じように見えても個体差があるので、多少煮え方に差があるのは当然のこと。神経質にならずに煮てみてください」
以下が、石川さん直伝の煮方です。

1、豆を豆の量の3倍弱の水に浸す。時間は8時間~一晩。時間というよりも、十分に吸水してしわがなく、ふっくらとピンと張った状態になるまで浸ける。
2、その水ごと火にかける。煮崩れしないコツは完全に沸騰させないこと! 90℃ぐらいでもう対流が起きているので、それで十分。沸騰させると激しく対流するため、煮崩れの原因になります。ボコボコっと大きな泡が上がるぐらいの温度で煮ます。
3、途中でアクを取りながら煮て、30分でほぼ煮上がります。40分で皮もかなり柔らかくなり、50分で皮は十分に柔らかくなります。その後の調理や用途、お好みに合わせて煮上げてください。
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上段左:健康的な笑顔が印象的な石川さんのご家族。上段右:石川さんが腕を伸ばしているほうが虎豆。成長すると蔓が3メートルになるため、4本の支柱を結束して丁寧に蔓を巻き付けていくので、とても手がかかります。下段:枯れてきたら支柱から外します。石川さんは、蔓を積み上げて自然乾燥させる伝統的な「にお積み」を行っています。十分乾燥したら収穫します。※画像はすべて、石川さんが「国際マメ年」のために制作した動画から作成。動画は以下から見ることができます。
https://youtu.be/LN-P7tsMTaU
https://youtu.be/YY6fuvOE80M

 

虎豆の上品な味わいを生かした、「夏野菜と虎豆の具を食べるスープ」。

 

「虎豆はえぐみがないので、どんな料理にも使えます」と石川さん。煮豆以外のおいしい食べ方もあるのではと、料理研究家の沼口ゆきさんにレシピを考えていただきました。この季節のおすすめは、「夏野菜と虎豆の具を食べるスープ」。
つくり方はとてもかんたんです。用意する野菜は玉ねぎ、赤と黄色のパプリカ、ピーマン、ズッキーニ、ナス、トマトなどの夏野菜。水分を出すために、ナスとズッキーニを多めに。全体を色よく仕上げるため、ナスは皮を剥いて使います。他の野菜の味を生かすために、トマトは少なめにしたほうがいいようです。
潰したニンニクひとかけをたっぷりのオリーブ油で炒めます。豆と同じぐらいの大きさに切った野菜を炒めて油が回ったら、お好みでローリエやローズマリーなどのハーブとトマトのざく切りを加えて20~30分蒸し煮します。最後に煮ておいた虎豆を加え、塩、コショウで味を整えたらできあがり。お好みで食べる前にオリーブオイルを少しかけます。
水もスープの素も加えず、野菜から出る水分だけで蒸し煮するのですが、さっぱりとしているのにコクと甘みのある野菜のダシが本当においしい。虎豆の上品な味わいは、野菜の優しさと相性がいいようです。この料理はとても栄養があり、冷たくてもおいしいので食欲の落ちる夏にぴったり。冷蔵庫で2、3日は日持ちします、朝食にもいいし、そうめんと和えたり、肉料理の付け合わせにしたりと色々使えて便利。カレーパウダーを少しふってもおいしいそうです。豆は凍ったまま調理できるので、時間があるときに虎豆を煮て冷凍しておくと、冷蔵庫の余り野菜でさっとつくることができます。

 

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石川さん宅のお子さんが好きな虎豆料理。

 

「正直に言うと、子どもたちは豆が大好きというわけではないですね」と苦笑する石川さん。子どもたちに栄養豊富な虎豆を食べてもらうためにつくるのは、クリームソースを使った料理だそうで、「反応がいいですよ」と石川さん。虎豆の雑味のない風味がクリームソースとよく合うのでシチューやクラムチャウダー、クリーム煮に加えて使うほか、特にグラタンが子どもたちに好評だそうです。
「お弁当ならひき肉のそぼろと合わせるのもいいと思います。虎豆はどんな料理にも使えます。野菜スープやカレーにもいいですし、雑味がないのでサラダにさっと混ぜてもおいしいです。常備しておいて、ぜひ、たくさん食べてください」
石川さんは、以前、町内の有志とともに会食イベントを行っていたそうです。また、食育活動にも力を入れていて、地元の食材のよさを生産者の立場から発信してきました。将来、自分の畑の真ん中にレストランを開くのが夢なのだとか。今は農業が忙しく、料理関係のイベントの開催はお休み中ですが、豆類の普及につながる機会があるときには積極的に参加していきたいとのこと。「豆類の扱い方や食べ方をもっと伝えられるように頑張っていきたいですね」と、頼もしく話してくれました。


市販の煮豆で、トーストに栄養をプラス。


お弁当や、食卓に一品加えたいときに重宝する市販の煮豆。そのまま食べるだけではなく、ちょっとした工夫で意外な楽しみ方ができます。料理研究家の沼口ゆきさんがよくつくるのは煮豆トースト。市販の煮豆をフォークで粗くつぶして、トーストにトッピングします。いつものトーストより、バターをたっぷりと塗るのがおいしさのポイント。不思議なほどトーストに煮豆がよく合います。金時豆はこくがあり、白花豆はあっさり。豆の風味によって違ったおいしさがあるので、煮豆をいくつか食卓に取り揃えて、好みのものを自分でのせても楽しい。栄養も考えてしっかり食べたい朝食におすすめです。

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